お布施とは
お布施とは、葬儀や通夜、各種法事・法要の際に僧侶に対して渡す金銭のことです。
お布施として寺院に納めた金銭は、御本尊の維持や寺院を運営する経費として用いられます。
お布施の本来の意味
お布施という言葉は、「六波羅蜜」という仏教における修行の一つである「布施行」という言葉が元になっています。
僧侶が読経や戒名を施すことを法施、それに対して金品を渡すことを財施といいます。言葉の起源としては、僧侶に対して布の衣服を施したできごとから布施という名称がついたとされます。
現代では衣服を渡すのではなく、単純に現金を渡すことが慣習とされています。
形式的には僧侶、遺族側の双方が布施行を実践していることになります。一般的には僧侶への謝礼という認識が広まっていますが、本来は御本尊に対する寄付として金銭を渡しています。
つまり、お布施の金額は遺族側が決めて良いのです。
しかし、相場がないと不安、困るという遺族の方が一定数いたことから、近年では寺院の方が料金表を作るか、目安となる金額を教えるようになったという背景があります。
お布施のマナー
基本的なマナーとして、お布施の金額に迷った場合は僧侶に直接尋ねることをおすすめします。
ただし、「何円包めば良いか」と率直に尋ねるのではなく「他の方々はいくらほどお布施を用意されていますか」という形で質問すると失礼に当たらず、具体的な回答を得やすいでしょう。
実際に僧侶の方へお布施を渡す際は、切手盆に載せて渡すのが最も良い方法です。
切手盆の用意がなければ、普通のお盆、もしくは袱紗(ふくさ)に載せるようにしましょう。
実際に差し出す際は、僧侶から見て袋が正面に来るように渡すように心がけます。なお、直に手渡ししたり、封筒を床に直置きしたりすることはマナー違反なので避けるべきです。
お布施を渡すのは葬儀や法事が始まる前か終了した後のどちらかが良いとされますが、僧侶の方が会食に参加される場合は、会食時に渡すのがマナーとされています。
金銭を包む袋は、仏式であれば白い封筒に墨で「御礼」や「お布施」と表書きをすることが一般的です。
礼節を重んじる場合は奉書紙に包むと良いとされますが、市販の白封筒でも問題はありません。
お布施の相場:通夜、葬儀・告別式
通夜から告別式までは一つの括りとして扱われることがほとんどで、お布施の一般的な相場は20万円~50万円とされます。
戒名授与やお車代が含まれる分、相場は高くなる傾向があります。枕経や通夜読経、火葬読経など、僧侶の方に経を読んでもらう回数が多いほどお布施の相場も高額になります。
最も高額になりやすいのは戒名料であり、宗派や寺院によって5万円~100万円まで幅があります。
戒名料は故人の社会的地位や知名度に比例して高くなる傾向があるようです。なお、戒名の種類は故人が生前にしていた行いに応じて決められるものです。
高額な戒名料を支払ったとしても「○○院」「○○院殿」のような立派な戒名が付くわけではないので注意が必要です。
お車代と御膳料は、それぞれ5千円~1万円が相場とされます。御膳料に関しては、僧侶が会食に参加されない時のみ必要になります。お車代に関しては、遺族側でタクシーを手配した場合は代金を代わりに支払うことでお車代とするのが一般的です。
お布施の相場:法事法要
告別式が済んだ後も、法事・法要は数多くあります。家の風習や地方のしきたりなどで相場が変わることがありますが、ここでは比較的広い地域で用いられている相場をご紹介します。
初七日
初七日とは、故人の命日を1日目として7日目に実施する法要です。
初七日のお布施としては3万円~5万円が相場とされています。
ただし、近年では葬儀と合わせて初七日を実施する地域もあります。
葬儀へ参列した遺族や親族が数日後に再び集まるのは難しいということが主な理由とされます。
葬儀と初七日の法要を同時に実施する場合は、お布施の金額も合算して包む地域と、別にして包む地域があるので、事前に喪主や寺院に確認しておくことをおすすめします。
四十九日
四十九日の法要では、3万円~5万円がお布施の相場とされています。
お布施以外にもお車代や御膳料、会食や引き出物などを手配する場合があります。
忌日法要は初七日と四十九日以外にもありますが、四十九日は仏教における忌明けなので特に重要とされています。
しかし、地域によっては初七日から四十九日までの七日ごとに法要を実施する所もあるようです。
お布施の相場は、それぞれ3~5万円で統一されています。なお、浄土真宗では故人は没後すぐに成仏すると考えられているので、忌日法要は行わないことが一般的とされます。
納骨
納骨法要のお布施は3万円~5万円が相場とされています。
四十九日と同時に行うことが一般的であり、お布施の金額は合算して1つにまとめる形で問題ありません。
開眼供養も併せて行う場合、包む金額に3万円~5万円を加算します。
仏教では4と9が不吉な数字とされているので、3つの法要を同時に行う際には合計10万円~13万円、或いは15万円になるようにしましょう。
初盆
初盆とは、故人の命日から1度目に巡ってくる盆であり、お布施の相場は3~5万円です。
ただし、四十九日内に盆が来る場合は例外として翌年が初盆になります。なお、初盆ではお車代や御膳料に各5千円~1万円、そして会食や引き出物の手配などを行うことがあります。
実施する時期は、地域によって7月13日~15日の新盆、あるいは8月13日~15日の旧盆のどちらかに大体分かれています。
お盆
初盆以降のお盆も、僧侶の方に自宅まで足を運んでもらい、経による供養をすることが一般的です。
お布施の相場は5千円~2万円とされます。初盆と同様、お車代や御膳料も別途必要になります。
お彼岸
お彼岸とは、故人が極楽浄土を目指して修業をする期間のことです。
一般的には法要を行わなくても良いとされますが、個別法要を行う場合は3万円~5万円がお布施の相場になります。
お彼岸には春と秋がありますが、お布施の相場はどちらも同じ額です。
寺院によっては合同で「彼岸会」という集まりが開かれるところもあるようです。彼岸会では3千円~1万円がお布施の相場になります。
一周忌
一周忌のお布施の相場は3万円~5万円が相場とされます。
故人の命日から丁度1年で実施する場合と、命日に近い週末に実施する場合があります。
遺族や親族の方が集まる都合上、仕事や学校などを優先して日程を決めることが多くなっているようです。
一周忌に対するお布施以外にも、お車代・御膳料としてそれぞれ5千円~1万円が必要になります。ただし、僧侶の方が会食に参加されない場合、御膳料は不要です。
三回忌
三回忌のお布施の相場は、1万円~5万円とされます。三回忌という名称ですが、故人の命日から2年目に実施する点には注意が必要です。
名称と実施する時期が1年異なるのは、没してから0年目を1年目として数える「数え年」という考え方に基づいていることが理由とされます。
七回忌や十三回忌なども同様に、数え年で年数を数えるので6年後、12年後となっていきます。
なお、三回忌辺りまでは故人と親しかった友人や親族などを幅広く招待して実施する家が多いとされます。
三回忌以降も、年忌法要では御車代と御膳料、会食や引き出物の手配が状況に応じて必要になります。
七回忌
七回忌のお布施の相場は、1万円~5万円とされます。
仏教では3と7という数字が良い意味を持つので、三回忌の次が七回忌となるようです。
故人の命日から6年空いているので、七回忌辺りからは親族で集まらずに身内で済ませる家が多くなってくるようです。
身内だけで集まる場合、寺院への連絡や会食に関しては不要になります。
参考として、七回忌以降は十三回忌、十七回忌といったように続いていきます。
お布施の相場は基本的に1万円~5万円です。ただし、三十三回忌や五十回忌などで弔い上げ(最後の○○回忌)とする際には5万円~10万円が相場になります。
お墓改葬
お墓を新たな場所に運ぶ、もしくは新たに購入することを改葬といいます。
既に建っているお墓を改葬先へ移す場合、閉眼供養(魂抜き)にかかるお布施として3~5万円が必要になります。
改葬先では開眼供養を行う必要があり、実施する時期に関わらずお布施の相場は3万円~5万円です。
開眼供養や閉眼供養では、お布施を渡す際に紅白の水引をあしらった袋を用いることができます。
さらに、改葬を完了するまでには墓石を購入したり、運搬したりする費用などで50~100万円ほどがかかるとされます。
もし菩提寺から墓を移す場合、離檀料として3~15万円ほどが別途必要になるようです。費用を抑えたい場合は納骨堂に移す、もしくは散骨や粉骨といった方法をとることも可能です。
まとめ
お布施の相場は宗教、宗派、地方によって異なるものです。
その地域の葬儀社や菩提寺に、必ず確認を取りましょう。
本来は相場という考え方がなかったものですが、現代では法事・法要の規模や重要さに応じて相場を設ける寺院が増えつつあります。
実際に尋ねれば金額を提示してくれる寺院も増えているので、包む金額に迷った際には素直に僧侶へ尋ねてみることをおすすめします。
それでも明確な答えが得られない場合、無理せずに包める金額を用意した上で、寺院に対する感謝を込めることが最も良い方法です。