家族葬とは
家族葬は、家族や親戚、ごくごく親しいご友人など、故人と親しかった方だけで行う小規模な葬式です。
基本的にご近所や仕事関係の方は呼びません。
そのため、家族葬は一般葬より参列者が少なく、故人と親しかった方一人ひとりが時間をかけて故人を送り出すことができます。
また、小規模ならではの落ち着いた雰囲気で葬儀を行うことができます。
内容次第では、小さめのホールや一戸建てのような貸し切りホールなど、リラックスできる環境で葬儀を行うことも可能です。
なお、式の流れ自体は宗教者をお呼びする場合は一般葬と変わりません。
家族葬と密葬の違い
家族葬と密葬の違いを知っている方は少ないでしょう。
2つの葬儀は、いずれも家族や親戚など故人と親しかった方だけで行うという点は同じですが、葬儀の後に行う本葬の有無に違いがあります。
密葬は、小規模な葬式を行った後、一般の参列者を呼んで本葬を行います。
家族葬の場合は、最後まで身内だけで葬儀を終わらせるため本葬を行いません。密葬を行う方としては、社会的地位の高かった方や、歌手や俳優などの著名人が多く見られます。
家族葬と密葬の違いはもう一つあります。
葬儀の開催を秘密にする必要があるかどうかという点です。
密葬の場合、葬儀に呼ばれる方以外には葬儀を行うことを伝えないため、呼ばれた場合は日時や斎場などの葬儀の情報が他者に漏れないように注意する必要があります。
家族葬と密葬の違いに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。→密葬と家族葬とはちがうもの?
家族葬にお呼びする範囲
家族葬に呼ぶ範囲に決まりはありません。そのため、例えば親族を呼ばずに家族だけで葬儀を行うこともできます。
家族葬に呼ぶ人数は事前に葬儀の規模を決めてから判断しますが、10名から30名ほどが目安です。
10人ほどの場合、声をかけるのは、故人の配偶者や子供、子供の配偶者、親や孫までとなるでしょう。
20人ほどの場合、それに故人の兄弟とその配偶者らが加わります。30人ほどの場合、さらに故人の従兄弟や甥と姪を呼びます。
人数に余裕がある場合は、故人と親しかった友人を呼んでも良いでしょう。
故人の遺志次第で、先述の声をかける範囲ではない方を呼ぶ場合もあります。
また、家族の考えにより、故人が親しかった方に優先して声をかける場合もあるため状況に応じて判断しましょう。
家族葬が選ばれる理由
家族葬は、日本国内で行われる葬儀の中で、一般葬の次に多く行われている葬儀のスタイルです。
家族葬が多く選ばれる背景には、高齢化と葬儀に対する社会的価値観の変化などがあります。
高齢化による参列者の減少
家族葬が多く行われている背景には、日本の高齢化社会が関わっています。
現代の日本における死亡者の割合は、80歳以上の方が半数以上と言われています。
昭和時代と比べると、80歳以上の高齢者が亡くなる割合は大きく増えています。
80歳以上の高齢者の場合、周囲との付き合いや会社との関わりが少なく、交友関係が少ない傾向にあります。また、故人の交友関係の減少により、連絡をする友人と知人が把握できないという問題もあります。
高齢化は参列者側にも影響があります。
参列される側の高齢化により、葬儀に向かうことが難しくなり、参列者数が少なる傾向があるためです。。
故人とゆっくりとお別れができる
家族が故人とのお別れの時間を取るためにも家族葬が選ばれています。
一般葬の場合、家族は葬儀の準備や多数の参列者への対応に追われるため、常に忙しい状態が続きます。
そのため、家族が故人を偲ぶ時間をとれないまま葬儀が終わってしまうことも多々あります。
家族葬であれば、葬儀の準備や当日対応しなければならない参列者の人数が少ないため、家族の負担は大きく減り、故人を偲ぶ時間を多くとることができます。
また、気心の知れた親戚や故人と親しい友人に参列者が限られていることにより、気を使う必要がなく落ち着いて故人を送ることができます。
費用を抑えられる
経済的な理由で家族葬が選ばれることもあります。
一般葬の場合は費用が高額になることが多く、相場は200万円ほどと言われています。
参列者が多い分、香典返しや会食費の負担が大きくなるのがこのような高額な費用の理由です。
一方、家族葬の費用相場はおおよそ30万から100万です。
一般葬より参列者が少ないことで、香典返しと会食費を抑えることができます。
また、小さめの式場で葬儀を行うことで式場利用費も大きく抑えることができます。
葬儀のスタイルを選べる
葬儀に対する価値観の変化により、宗教と伝統に対する意識の変化が起きたことも理由として挙げられます。
昨今では、従来のしきたりや決まりを守ることをそれほど重要視しない方も増えてきました。
一般葬が宗教儀礼やしきたり、風習を重んじる一方、親族や近しい友人のみで行う家族葬は、宗教や伝統にとらわれず自由な葬儀を行うことができます。
そのため、家族葬の内容は、故人や家族の希望を反映させやすくなります。
例えば、家族葬であれば、個人の好きな音楽を演奏する音楽葬を選んだり、故人の写真を流すスライドショーを行ったり、葬儀の自由度が高まります。
また、無宗教葬として、なじみのない宗教のしきたりに従わずに行うことも可能です。
家族葬の注意点
親戚や友人と最後のときをゆっくり行える家族葬はメリットばかりに見えますが、デメリットもあります。
ですが、事前にきちんと知っておくことで防げることもあるので、下記でしっかり解説いたします。
自宅への弔問客が増えてしまう
葬儀に呼ぶ参列者の範囲が狭い分、予想していたよりも多くの弔問客が自宅へ訪れることがあります。
弔問客は葬儀に呼ぶ参列者とは異なり、いつ自宅に訪れるか分かりません。
また、予期せぬ弔問客の来訪が長期間続く可能性もあり、結果的に家族の負担が大きくなることも考えられます。
故人の交流の広さは家族が知らない部分もあるため、注意が必要となります。
寝台車などで周囲に知られてしまう
家族葬は必ずしも秘密にする必要はありませんが、家族によっては身内だけで内密に行いたい場合もあるでしょう。
しかし、場合によっては参列者以外の方に葬儀の存在を知られてしまうことがあります。
例えば、自宅へご遺体を搬送する寝台車や、葬儀の打ち合わせをする葬儀社の業者の出入りは、近隣住民に目撃される可能性があります。
目撃された場合、葬儀の最中や葬儀後に近隣住民への対応に追われることもあります。
家族葬を行うことを付き合いのある近隣住民にだけでも事前に連絡しておくと、このような問題を避けることができるでしょう。
または町内会長から共有してただくなど、相談することも手です。
家族葬に不満のある親族と揉めてしまう
親族の中には家族葬に反対する方が出てくる場合があります。
親族が家族葬を反対する主な理由は以下のとおりです。
・故人の社会的地位が高かった場合、葬儀の後に本葬がある密葬のように一般の参列者が呼べないと、参列したかった人から後々不満が生じる可能性があるから。
・故人が生前人付き合いの多い人だった場合、親族が「人付き合いの多かった故人が一般の人を呼ばない家族葬を望むはずがない」と思うから。
・葬儀のしきたりや伝統を大事にする親族の場合、一般葬とは違う家族葬について理解を得られないから。
・故人の生前の人間関係を把握しきれていない場合、故人と親しかった方へ訃報や葬儀案内を伝えられないから。
上記のような理由で、家族葬を望む家族と揉めてしまうこともあります。
親族の理解を得るには、家族葬を望んだ故人の遺志や、家族葬を行う理由を丁寧に説明をしたり、話し合うことがとても大切です。
「呼んで欲しかった」と連絡がきてしまう
葬儀に呼ばれなかった方から「葬儀になぜ呼ばなかったのか」「どうして故人が亡くなったことを教えなかったのか」などと問い合わせがくることがあります。
このような問い合わせがきた場合、場合によっては故人の親族や友人との関係に問題が生じることがあります。
問題を回避するために、電話などで家族葬を行うことや、参列を辞退してもらうことを事前に伝えましょう。
訃報にその旨を明記し、お伝えすることも手です。
葬儀後に香典を渡されてしまう
葬儀に呼んでいない方から、香典を渡されることがあります。
香典をいただいた場合、受け取りを拒否することは失礼にあたるため、香典を受け取った上で後日香典返しを送ります。
また、葬儀後だけではなく、葬儀当日に香典をいただくこともあります。
葬儀当日の場合、失礼にならないように料理や会葬返礼品を渡しましょう。
この場合も後日香典返しを渡すことも可能です。
どうしても香典を受け取りたくない場合は、葬儀の案内を送る際に、香典を辞退する旨を伝えましょう。
ただし、例えば香典を辞退する旨を明記したとしても、万が一香典を持参する方がいた場合に備えて香典返しの準備をすることは重要です。
一般葬より出費が多くなってしまう
一般葬より参列者が少ないことで、参列者からいただく香典の総額が少なく、かえって自己負担額が増えてしまうことがあります。
言うまでもありませんが、香典を受け取らないと決めてその旨を伝えている場合は、葬儀費用を全額負担することが前提となります。
香典があるかないか、どれくらいの香典が見込まれるかをきちんと考えた上で、予算にあった葬儀会場・プランの選定が重要です。
まとめ
この記事では、家族葬とは何か、家族葬が選ばれる理由、家族葬の注意点を解説しました。
家族葬は、親しい親族だけで行う葬儀として人気が高くなっています。
落ち着いた雰囲気の中、少人数で故人を送りたいと望むならば、この記事を参考に家族葬を検討してみてはいかがでしょうか。