そもそも弔問とはなにか
弔いの訪問をすることを「弔問」と言います。
主に通夜、もしくは葬儀後に、故人への弔いの気持ちと遺族へのお悔みを伝えるために訪問することを指します。
お葬式に訪問することは「会葬」といい、「お葬式に弔問する」という表現も間違いではありませんが、意味合いとしてはお葬式以外に弔いの訪問を行うことを指すことが多いようです。
この記事では通夜へ弔問することを主題にマナーを解いていきます。
弔問する際のマナー
短時間で終わる弔問ですが、基本の礼儀を一から見直してみましょう。
故人との最後の対面時、遺族への慰めになるよう、わきまえておきたい服装や所作などマナーを解説します。
通夜前の弔問は原則避ける
本当に親しい親族や近所の方で、通夜前の手伝いを申し出たい場合があるかもしれませんが、その際は遺族の方から依頼があるでしょう。
多くの場合、病院で亡くなることの多い日本は、霊安室にそう長い時間いることが出来ず、亡くなられた後は早めの引き取りが促されます。
遺族は故人と共に自宅に戻り、バタバタと葬儀の準備に追われているので、招かれていない限りお亡くなりになった直後の弔問は避けましょう。
また地域によっては「仮通夜」といい、身内だけでひっそりと通夜を行っている場合があります。
僧侶も弔問客も呼ばず、近しい者だけで最後に故人とゆっくりとした時間を過ごしているのが仮通夜なので、訃報の知らせを聞いても、基本的に招かれていない限りはお邪魔するのは控えることが賢明です。
服装に気を付けましょう
通夜前の弔問はできるだけ避けますが、地域のしきたりに詳しく、頼まれて手伝いに伺う場合、地味な普段着こそが相応しい服装です。
通夜前に喪服で伺うのは、死をあらかじめ予想していたようで失礼にあたります。また手伝いで伺うならエプロンなども持参するとより良いでしょう。
本通夜に弔問する場合は、男女共に準喪服を着用します。黒のスーツかワンピースに、男性のネクタイも黒、ネクタイピンは付けず結婚指輪以外のアクセサリーも外します。
靴やカバンも動物を殺生した革はできるだけ避けて布製を選びます。喪主は葬儀で正喪服を着るため、通夜では準喪服の場合もあります。弔問客が喪主よりも格が上だと逆に失礼にあたるので、通夜では正喪服でなく、必ず準喪服で伺いましょう。
真珠は涙の象徴として弔事でも身に着けられるアクセサリーですが、通夜では「取るものもとりあえず駆けつけた」という装いが相応しいため、通夜で真珠のネックレスまでするのは用意周到な感じが出てしまいます。
葬儀よりもあくまでも質素で簡素な服装が相応しいのが通夜の弔問です。
お通夜だけに参列する場合は香典を忘れずに用意すること
お通夜だけに参列する場合は香典を忘れずに用意しましょう。
遺族から香典辞退を申しだされた場合を除いて、香典は用意するものになります。
お通夜と告別式の両方に香典を持参するのはマナー違反となるので気を付けましょう。
お通夜の香典の相場としては、友人やお世話になった知人の場合は10,000円程度、付き合いのある友人や知人の場合は5,000円が一般的な相場とされています。
故人を偲ぶ気持ちが強く、高額な金額を包む方もいますが、逆に遺族に気を遣わせる結果になるため注意が必要となります。
会社関係者の場合は、弔問する側の年齢によって金額が異なるようです。
20代の方が上司の方にあたるお通夜では5,000円前後~10,000円程度、30代以降では10,000~30,000円程度となります。
また、会社では有志を募り連名で香典を出すことも方が多いため、周囲に確認を取るようにしましょう。
お悔やみの言葉は手短に
通夜は短い時間にバタバタと弔問客が出入りするので、お悔みの言葉は手短にします。以下が例文です。
「この度は、誠にご愁傷様でございます。心からお悔やみ申し上げます。」
「急なお知らせで、いまだに信じられない思いです。お慰めの言葉も見つかりません。」
また、故人の死因について余計なことは尋ねないのがマナーです。中には言いにくい死因の場合もあります。
どういう状況で亡くなったのかが分からず仕舞いでも、ただ亡くなったことに対しお悔みを伝えましょう。
また通夜に弔問しても、遺族に言葉をかけることを必須と思わなくても構いません。お悔みの一言を手書きで追記した名刺などを手伝いの人に渡し、焼香をしてお暇しても良いのです。
遺族は翌日の葬儀への参加返信対応や弔電の受け取り、会食の準備などの対応に追われているので、弔問客一人一人に対応する時間は十分にはありません。
通夜振る舞いの食事が用意される通夜なら、その食事が始まる前に喪主から全体への挨拶があり、食事中に喪主の方が一人一人と言葉を交わしに回ってくれるでしょう。
三々五々に食して帰るような地域でも、通夜振る舞いの部屋で遺族がタイミングの合う時に声を掛けてくれます。
喪主・遺族から「この度はお忙しいところお悔やみいただきまして、まことにありがとうございます。」と挨拶されたら、「突然のことでお慰めの言葉もございません。本当に残念でなりません。」などと手短に答えましょう。
後日弔問について
通夜・葬儀に参列できず、後日に弔問することを「後日弔問」と言います。都合で通夜・葬儀に伺えなかった場合、葬儀の片付けが落ち着いた3日後から四十九日までに伺うのが一般的です。
遺族と日程を調整して伺うものなので、あらたまった訪問着を着用します。黒でない、紺やグレーなどの控え目な色目のスーツやワンピースが相応しいでしょう。
後日弔問で喪服を着ないのは、立ち直ろうとしている遺族にいつまでも悲しみを思い起こさせないようにする配慮です。
香典をまだ贈っていなかった場合は、後日弔問で香典を持参します。
郵送済みの場合は、小さくて構わないので仏前に供えられるお供物を持参すると良いでしょう。
故人が好きだった食べ物などの消えものが喜ばれます。避けるべきは冷蔵庫の場所を取る冷蔵物、ハムや干物などの殺生物です。
小分けされた菓子折りなどが相応しいでしょう。後日弔問のお供物の表書きは「御霊前」になります。
弔問を避けるべきケース
前述した「仮通夜」のように、そもそも弔問客を呼ばない身内だけの通夜もありますが、その他にも弔問を避けるべきケースがあります。
どのケースにも当てはまるのは、弔問に伺えない理由をくどくど述べる必要はないということです。
遺族は葬儀のことで頭がいっぱいで、参列者が来られない理由を知る必要はありません。
おめでたい理由で弔問できないならなおのこと、遺族の悲しみからすれば知りたくない情報です。
「別の用事があるから」などと個々の理由は述べずに、「本来ならばすぐにでもお伺いしたいところですが、やむを得ぬ事情によりすぐに参上できず申し訳ございません。」とのお手紙と共に、心のこもった香典と供物を代わりに郵送すれば良いことです。
以下、弔問を避けるべきケースを見てみましょう。
自らの出産が控えている場合
妊婦が葬式に出てはいけない決まりはありませんが、体調を万全に期したい時期であれば香典と供物だけをお送りするので構いません。
日本の考え方では妊婦は「ハレ」の象徴であり、葬儀の「ケガレ」に当てるとお腹の子に良くないといった言い伝えもあります。
妊婦さん自身がというより、通夜の場で妊婦さんを見る周りの人がむしろ禁忌を気にする地域もあるでしょう。
生命の象徴である妊婦と死の場面とは、人々の感情として相容れないものなのです。
「ケガレ」を跳ね返すためにお腹の中に鏡を入れていく、魔除けの色である赤い布をお腹に巻いていくといった習慣もありました。
お世話になった方で、どうしても弔問したい場合、葬儀・告別式は火葬の時間も含み長くなるため、短い時間で済む通夜の方が良いでしょう。
行くとしても、お線香の香りなどで気分が悪くなった時に備え付添人を伴って行き、遺族の方にお手間はかけないよう自己管理ができる場合のみに限りましょう。
身内の結婚式がある場合
結婚式などのおめでたい慶事と、通夜・葬儀など悲しみ事である弔事が重なった場合、弔事を優先させるのが一般的なマナーです。
生きている人にはまた会って祝福を伝えられますが、亡くなった人と会えるのはこれが最後だからです。
もし友人の結婚式と友人の通夜が同日になった場合は通夜への弔問を優先しますが、身内の結婚式とさほど親しくなかった方の通夜が重なった時だけは、身内の結婚式を優先して構いません。
他人様の通夜に自分が弔問しなくても進行しないことはありませんが、身内の結婚式では自分が出席していないと進まない進行があるためです。
香典と供物を郵送し、その後の四十九日や節目の法事に後日弔問に上がることにしましょう。
病気療養中や高齢な場合
とある年配の芸能人の方は、会葬は辞退しますと普段から公言していらっしゃいます。
有名人ともなれば知り合いの数も膨大で、自身も高齢であると友人も高齢であり、通夜・葬式の案内状が多数来るそうです。
さらに人が亡くなるのは真夏の暑い時期か真冬の寒い時期が多く、参列する自分が身体を壊しそうだから、というのがその理由です。
葬儀に参列はしません、と公言して、代わりの香典と供物に心を込めるのも一つの方法です。
また病気療養中の場合も、身体に無理をしてまで弔問を義務と思う必要はありません。
伺えない理由は述べる必要はなく、香典と供物を送っておきます。
まとめ
通夜への弔問も様々なケースとマナーが存在します。考え方によっては弔問しない方が良い時もあります。自身の立場と事情をわきまえながら、正しい弔問をしたいものです。