ご遺体の安置とは?
故人がお亡くなりになった後、葬儀を手配するまでご遺体を一定の場所へ留めておくことを、「ご遺体を安置する」といいます。
安置は葬儀や遺品整理よりも先に行うべき事であり、安置する場所や用いる搬送方法などは最初に決める必要があります。
ご遺体を安置する場所
多くの場合、ご自宅あるいは葬儀社の安置室が安置場所として選ばれます。
亡くなられた直後は病院や警察署にある霊安室へ入るケースが多いですが、そのまま長く安置することは設備上の理由で困難な為移動させる必要があります。
まず、自宅へ安置する場合は、お仏壇がある部屋へ安置することが好ましいとされます。
もしお仏壇が無いのであれば、衛生的な観点から冷房で室温を低くできる部屋を選びましょう。
ご自宅での安置が難しい場合、葬儀社や火葬場などが保有する霊安室へ運搬して安置することになります。
ご遺体の運搬方法
安置場所までご遺体を運ぶ主な手段は搬送車となります。海外の場合や遠方の場合は船舶、飛行機のいずれかも用いられます。
搬送車は、遺体運搬に用いる車両として国から認可されている車です。搬送車を保有しているのは葬儀社もしくは遺体運搬を専門に行う事業者だけなので、運搬手段として使いたい場合は直接依頼する必要があります。
故人が国内の出かけ先や、海外などで息を引き取った場合、運搬手段として船舶や飛行機を用いるケースがあります。
遠隔地から運搬する場合も、葬儀社もしくは専門業者へ依頼すれば対応してもらう事が可能です。
他には、遺族の方が自家用車で運搬する方法もありますが、故人の死亡診断書を必ず携行しておくことが必要な上、周囲の人や警察などに違法性を疑われる可能性が高いといった問題があります。
実際に遺族が故人を乗せていれば法律的には問題はありませんが、衛生面や棺を積載するスペースなども考慮しなければなりません。
特別な場合を除き、業者へ依頼することをおすすめします。
ご遺体を安置する期間
没後24時間はご遺体を火葬できないように「墓地埋葬法」で規定されています。
したがって、少なくとも故人が死亡判定を受けてから1日は安置する必要があります。
1日置くのは、故人が誤って死亡判定を受けた可能性を確かめるためです。
一方で、期間の上限に関しては公的な規定がありません。
遺族の裁量しだいで期間を決められるといえますが、実際には2~3日ほどで火葬場や葬儀場へ移す方が多いようです。
宗教による安置の仕方の違い
故人のご遺体を安置する方法は、故人や遺族が信仰する宗教によって異なります。
ここでは、日本国内における実施例が多い仏式、神道式、キリスト教式の安置方法をそれぞれご紹介します。
仏式の遺体安置
まず、仏教式の遺体安置の方法をご紹介します。
地域や宗派によって一部実態と異なる場合があるので、一般的な作法の一つとしてご参考にしてください。
ご遺体は北か西に頭が来るように安置します。
敷き布団あるいはベッドの上にシーツを掛けて、さらに掛け布団を敷きます。
掛け布団は裏表を逆にしましょう。
そして、故人の顔に白い布を掛け、胸部で合掌する形になるように腕を整えます。
このとき、故人の腕に数珠を装着します。
さらに、宗派によっては掛け布団に守り刀を乗せる場合があります。
最後に、枕元へ白木の小台を配置して、台の上に「香炉、燭台、鈴、お花立て、水、一膳飯、枕団子」を乗せて枕飾りとします。枕団子は6個、または49個とする地域が多いようですが、実際にどうするべきかは葬儀社へ直接確認することをおすすめします。
神式の遺体安置
神道式の場合、基本的な作法は概ね仏教式と同じですが、いくつか異なる点があります。
まず、故人の頭が西か東に来るように安置する必要があります。
そして、故人の腕には何も装着しないようにしましょう。
枕飾りに関しては「ロウソク2本、榊、お神酒、水、洗米」を白木の小台へ乗せます。
場合によっては、故人が生前好んでいた物を合わせて置くこともあります。
キリスト式の遺体安置
キリスト教式の場合、故人の頭は北に置くことが一般的です。
キリスト教では、祈りを捧げる人物が到着してから安置を始めるようにします。
故人の枕元へ何かを置くという風習はありませんが、安置場所となっている祭壇の上へ白い布を置いてから「十字架や聖書、燭台、生花」を供えます。
ご遺体の安置と搬送に必要な費用
どういった方法で搬送する場合でも、搬送費用は確実に掛かります。
専門業者へ依頼した場合、10㎞あたり2万円ほどが相場です。
ただし、葬儀社が運送を請け負う場合は一定距離まで追加費用なしで対応してくれるケースもあるようです。
ここからは、主に用いられている安置先と、平均的な相場をご紹介します。
自宅にて安置する場合
自宅を安置場所にする場合、基本となる運送費用に加えて、故人の外見を維持するためのドライアイス代と供物代が掛かります。
施設利用料や葬儀スタッフの付き添い料は不要です。
ドライアイス代は1日1~2万円が相場とされています。
夏季であれば1日10㎏ほどは必要ですが、葬儀社へ相談すれば用意してもらう事は可能です。
枕飾りに用いる供物は、葬儀社へ依頼した場合は2~3万円が一般的な相場とされています。
仏式であれば、香炉や燭台といった仏具は葬儀社が有料で揃えてくれることが殆どです。
葬儀社の安置所の場合
葬儀社が管理する安置所は、運送費用やドライアイス代に加えて、施設利用料が必要になります。
施設利用料は1日あたり5000円~3万円が相場とされています。
基本費用とは別に、施設スタッフに24時間体制でご遺体を直接見ていてもらう場合、オプションサービスとして追加費用が掛かります。
プロの葬儀スタッフが対応する分、平均的な利用料金は高くなる傾向があります。
しかし、公営葬儀場を利用できれば施設利用料は1日2~3千円ほどに抑えられるので、葬儀社が提携している施設や、葬儀場のスケジュール次第であるともいえます。
民間業者の安置所の場合
民間企業による安置所は、事業者ごとに設備や料金体系は異なっています。
運送費用、ドライアイス代、施設利用料は掛かりますが、利用プランによっては施設利用料を安価に抑えられる場合もあります。
一つの目安としては、ドライアイスと枕飾りを合わせて依頼すると2万~5万円が相場となっています。
枕飾りを省略する場合、1万円ほどまで抑えられます。
安置場所ごとのメリット・デメリット
主な安置先には、故人の自宅と、葬儀社が運営する施設と、民間企業が運営する保管専用施設の3種類があります。
それぞれメリット・デメリットがあるので、状況や事情に応じて最適な安置場所を選ぶようにしましょう。
自宅にて安置する場合
自宅へご遺体を安置する場合、遺族の方が葬儀までをゆっくりと過ごせることが一番のメリットとしてあげられます。
故人に対する思い入れが強い方は自宅への安置を希望するケースが多いようです。
宿泊料や施設利用料が不要である点もメリットです。
デメリットとしては、家の間取りや場所によっては棺を搬入しづらい事と、隣近所へ迷惑をかけてしまう可能性が高いことがあります。
住宅内に充分なスペースが無い、集合住宅のエレベーターに棺が収まらない等で搬入をあきらめる事例は多いです。
そして、隣近所へ遺体が運び込まれることに抵抗がある方も少なからず居ます。
ご近所との関係性にもよりますが、必ず周囲の同意を得てから棺を移すようにしましょう。
葬儀社の安置所の場合
葬儀社が管理する安置所を利用するメリットは、専門業者へ必要な作業を委託できることが一番にあげられます。
故人の家族に掛かる負担が少なく、バリアフリーに配慮した施設であればご高齢の弔問客や遺族が過ごしやすいというメリットもあります。
デメリットとしては安置費用が高額化することと、業者によっては故人に直接対面することを制限される場合があります。面会をオプションサービスにしている葬儀社もあり、前もって確認していないと故人と顔を合わせることができないまま葬儀を迎えることにもなりかねません。
用意されているプランやサービス内容については、事前に必ず確認しておきましょう。
民間業者の安置所の場合
民間業者の安置所というと、都市部では利便性の良い場所に、通常のホテルと変らないような建物で「遺体ホテル」と呼ばれる施設などのことを言います。
葬儀社が運営していたりとさまざなです。
民間の安置所を利用するメリットは、専門業者へ依頼するので遺族にかかる負担が少ない事と、利用期間やプランを必要に応じて選べることがあげられます。
自宅葬が難しい場合に自宅近辺に安置したい場合や、葬儀や火葬に移るときに移動距離を抑えたい場合などに民間施設は適しています。
デメリットとしては、施設によっては低温施設がなく、数時間しか滞在できない場合があることと、平均的な利用料が葬儀社と比べても高い傾向にあることなどです。
対応できる利用期間や料金体系は事前に確認しておきましょう。
まとめ
御遺体の安置を実施する理由から、一般的な安置の方法や平均的な費用などをご紹介しました。
基本的な手順や作法は事前に葬儀社に確認を取ることで、予め基礎的な知識を持っておくとゆっくりと過ごせるように準備を進めることができます。
当記事で紹介した知識をもとに、少しでも後悔のない時間を過ごせるように心がけておきましょう。