数珠とは
数珠は、仏教を信仰する際に使う仏具です。数珠玉という珠を輪になるように繋げて房をつけたもので、通夜や告別式で焼香をする時や、日常の読経の際に使用されます。
もともと数珠は、念仏の数を数えるための数取りとして使われるものでした。
現在は、念仏の数を数えるという用途より、自分の身を護るためのお守りとして利用されることが多くなっています。
数珠の起源
数珠の起源は、バラモン教の聖典「ヴェーダ」に記載されている「連珠」ではないかと言われています。
バラモン教は、古代インドで信仰されていた宗教で、仏教の起源になった宗教です。
バラモン教では、ヴェーダを唱えた数を数えるために連珠という道具を使っていました。
この連珠が、仏教の伝来とともに日本へ伝わり、日本の仏教の宗派ごとに形を変えて今の数珠になったとされています。
108珠の由来
仏教では、人間には貪欲(とんよく)、瞋恚(しんい)、愚痴(ぐち)など108の煩悩があるとされています。
数珠にはこれらの煩悩を司っている仏様が宿っており、持ち主の煩悩を引き受けてくれると考えられています。
この、数珠が108の煩悩を引き受けるという考えが、108個の主玉の由来なのです。
本式数珠と略式数珠
数珠には、珠数が多く、1つの宗派だけしか使うことができない本式数珠と、珠数が少なく、宗派に関係なく使用できる略式数珠があります。
特定の宗派に属している場合は、本式数珠を購入しても良いのですが、告別式などでしか利用しないという場合は、略式数珠を選ぶ方が良いでしょう。
本式数珠
本式数珠は、宗派によって数珠玉の形や並びなどが異なります。
略式数珠の場合は、どの宗派でも使うことができますが、本式数珠は基本的に1つの宗派のみでしか使用できません。
同じ宗派でも、男性用と女性用では数珠玉の大きさや房の形が異なる場合が多く、購入する際は注意が必要です。
本式数珠は、大きな輪をひねって二重にした状態で使用します。
数珠は108個の主玉が基本ですが、浄土宗のように108個ではない数珠も存在します。
略式数珠
略式数珠は、本式数珠の数珠玉を減らし、簡略化した数珠です。本式数珠とは違い、ほとんどの宗派で使用可能な宗派共通の数珠です。
略式数珠は数珠玉の数に明確な決まりがなく、男性用は10mmから18mmの数珠玉を22珠や20珠、18珠使用したものがよく使われます。
女性用は、珠数ではなく使用する数珠玉のサイズが基準になります。
7mmの数珠玉が標準と言われますが、6mmや8mmのものもあるので、持ちやすさや手の大きさなどを考えて選ぶと良いでしょう。
略式数珠は、数珠玉の素材や形を自由に選択できるので、自分好みのものを選ぶことができます。持ち運びもしやすいので、初めて数珠を購入する方にはオススメです。
ブレスレットタイプの数珠
ブレスレットタイプの数珠は、仏具としての数珠を簡略化し、普段から身に着けやすいようにしたものです。
本式数珠や略式数珠のような宗教的な意味合いは少なく、身を護るお守りとして使われます。
ブレスレットタイプの数珠は、27個の主玉と親玉が1個、天珠が2個で構成するのが基本ですが、腕の太さに合わせて主玉の数を増減したり、宗派によって構成が異なったりします。
ブレスレットタイプの数珠は、通夜や告別式で数珠の代わりに使うことはできません。
数珠の値段相場
数珠は、2000円台の比較的安価なものから、50万円以上する最高級のものまで様々な価格のものがあります。
本式数珠の相場は1万円から3万円程で、略式数珠の場合は、本式数珠よりも珠数が少ないので、価格も1万円程度かそれ以下のものが相場です。
数珠の価値は、使用している素材の希少価値と品質、珠の加工の違いで決まります。
本式数珠の場合は、素材自体に意味があることが多いため、持つ人の用途にあった素材のものを選ぶのが基本です。
略式数珠の場合は、好みとインスピレーションで選ぶのが一般的です。
宗派で異なる本式数珠
本式数珠の宗派の違いと、数珠の使用方法をご紹介します。
こちらでご紹介する数珠の持ち方は、その宗派で一般的とされているものですが、同じ宗派であっても寺院ごとに数珠の使用方法が異なる場合があります。
真言宗
真言宗で使われている数珠は、振分念珠とも呼ばれ、日蓮宗以外の他の宗派で使用可能な宗派共通の本式数珠です。
振分数珠は、108個の主玉と親玉2個、天珠4個で構成されており、房は梵天房です。浄明玉を左手人差し指に、反対側を右手中指にかけて手を合わせるのが真言宗の基本的な数珠の使用方法になります。
浄土宗
浄土宗の数珠は、1つの輪になっているものではなく、別々の2つの輪を繋いだ形のものになります。
浄土宗では、念仏を唱えることで成仏できるという教えを説いています。
そのため、浄土宗の数珠は、念仏を唱えた数を数える「数取り」の役割が大きいのです。
浄土宗の数珠は、男性用と女性用で数珠玉の数が異なります。
男性用の数珠は「三万浄土」と呼ばれ、32400回の念仏を数えることができます。
女性用のものは「六万浄土」と呼ばれ、64800回の念仏を数えることができます。
使用方法は、2つの数珠の輪を重ね、合掌した両手の親指にかけて房を手首の内側に垂らす持ち方が一般的です。
浄土宗では、数珠を鳴らすことがマナー違反となりますので気をつけましょう。
浄土真宗
浄土真宗では、人間は煩悩が100%だとしています。
この考えを「煩悩具足の凡夫」と呼び、煩悩具足そのままで救われるという教えを説いているのが浄土真宗です。
浄土真宗では、念仏を数える必要がないため、数珠に数取りの役割はありません。
そのため、浄土真宗の数珠は、数が数えられないような作りになっています。
数珠の構成は、108個の主玉と親玉が2個、天珠が4個で、房は蓮如結びという結び方になっています。本願寺派の数珠は房が頭付撚房、大谷派の数珠は房が切房という違いがあります。
本願寺派と大谷派では数珠の持ち方に違いがあります。
本願寺派は、両手を合わせ、2重にした数珠をかけて房を下に垂らすのが基本の持ち方です。
大谷派では、両手を合わせ、2重にした数珠を房が上を向いた状態になるようにかけ、房を左手の手の甲に垂らすのが基本の持ち方とされています。
日蓮宗
日蓮宗には、「装束数珠」と「勤行数珠」という2つの数珠があります。
装束数珠は、儀式の時に僧侶が使うもので、檀家や在家の信徒が使うのは勤行数珠です。
108個の主玉と親玉が2個、天珠が4個、浄明玉が1個、弟子玉が20個、露玉が4個、数取玉が10個で構成されています。
房は梵天房で、片側が2つ、もう片側に3つ付いています。
使用方法は、3つの房の方を左手中指にかけて数珠をひねり、2つの房の方を右手中指にかけて両手を合わせます。
曹洞宗
曹洞宗では、檀家や在家の信徒の心得として、本式数珠を持つように教えています。
禅宗の宗派の1つである曹洞宗では、座禅によって悟りを開くという教えを説いています。
曹洞宗では念仏を唱えないので、数珠に数取りの役割はなく、細かな決まりごともありません。
数珠は108個の主玉と親玉1個、親玉の対角に向かい玉が1個、天珠が4個、ボサが1個、銀輪が1個で構成されており、男性用は房が紐房、女性用は頭付房(かしらつきふさ)です。
曹洞宗と臨済宗の数珠は、数珠玉の構成が全く同じなので間違えやすいのですが、曹洞宗の数珠には銀の輪が入っているという特徴があります。
基本的な使用方法は、数珠の輪を2重にして左手を通し、右手は輪に通さずに合わせます。
臨済宗
臨済宗は、曹洞宗と同じく禅宗の宗派で、座禅によって悟りを開くという教えを説いています。
臨済宗の数珠は、基本的に曹洞宗のものと同じで、108個の主玉と親玉が1個、親玉の対角に向かい玉が1個、天珠が4個、ボサが1個で、男性用の数珠の房は紐房、女性用の数珠は頭付房となります。
曹洞宗の数珠との違いは、臨済宗の数珠には銀の輪が入らないことです。
使い方は、数珠の輪を2重にして、左手にかけ、右手を輪に通さずに合わせます。
天台宗
天台宗の数珠には、丸玉ではなく平玉というみかんのような形の数珠玉が使用されています。
数珠の構成は、108個の主玉と親玉1個、天珠が4個、弟子玉という房の根元の部分に使う数珠玉が平玉20個、丸玉10個、露玉が2個で、房は梵天房です。
天台宗の数珠は、両手の人差し指と中指の間にかけ、房を下に垂らした状態で手を合わせるのが基本の持ち方です。
移動や着席している時は、数珠を2重にして親玉が上に向くように左手にかけて握ります。房は左手の手の甲側に垂らします。
まとめ
仏教の宗派を信仰していない人にとって、あまり一般的ではない数珠。
通夜や告別式で見ることはあるけれど、どういう意味があるのか、持っていたほうが良いのかなど、迷う人は多いでしょう。
数珠は、仏教を信仰する時の仏具としての意味合いが強いものですが、身を護るためのお守りという大切な役割も持っています。
檀家や在宅の信者でない限り、本式数珠を購入する必要はありませんが、宗派共通で使える略式数珠を1つ用意していると、突然の訃報の際も慌てることなく済みます。
通夜や告別式では、数珠に関する決まりごとを守って、故人のご冥福を祈りましょう。