枕飾りとは
枕飾りとは、故人の枕元に飾る小さな祭壇のことで、小さな台のような形状をしています。
故人が自宅で亡くなった場合や、病院から自宅に遺体を搬送した場合、お通夜あるいはお葬式を行うまでの間にこの枕飾りを行います。
大きさは宗派などにより異なりますが、多くの場合は半畳から1畳程度のものを設け、たとえ本祭殿が大きくても枕飾りは小さめにするのが通例です。
なお、宗教や宗派、地域によって、祭壇に置く枕飾りは異なります。
枕飾りが持つ意味
枕飾りは、お通夜やお葬式の前に来てくださった弔問客が、線香を手向けたり礼拝したりできるようにする仮置きの祭殿の意味を持ちます。
また、黄泉の国へ旅立つ死者の魂が無事に成仏することを手助けする役割も兼ねています。
死後間もない魂は、現世のありとあらゆる欲に対しての執着を抱いたままであるため、これを解いてこの世への未練を断ち切る目的も果たすのです。
枕飾りを設けた上で、僧侶に読経をあげてもらい、成仏へと導きます。
枕飾りの配置について
枕飾りの配置は、宗教や宗派、地域などによって異なります。
この機会に、「仏教」「キリスト教」「神道」について、それぞれの枕飾りの配置を理解しておきましょう。
仏教の場合
仏教では、小さめの台に白布をかけるか白木の台を設置します。台の上には、「香炉」「ロウソク立て」「花瓶」「枕団子」「一膳飯」「枕団子」「浄水」を飾ります。
ただし、浄土真宗の場合、亡くなった方はすぐに浄土に出立して仏様となり現世には存在しないと考えられているため、「枕団子」「一膳飯」「浄水」は必要ありません。
花瓶には「樒(しきみ)」の花を用いますが、菊や百合、水仙などで代用することも可能です。
「香炉」「燭台」「花瓶」これらを合わせて「三具足(みつぐそく)」と言います。「一膳飯」とは大盛りのご飯の上に箸を立てたものを指し、「枕飯」と呼ばれます。
枕飯は、故人がこの世の未練を断ち切れるようにとの思いから、ご飯をできるだけ高く盛ります。
キリスト教の場合
キリスト教では元来、枕飾りは執り行いませんが、最期を迎える直前に枕飾りに近いものを設置します。
日本におけるキリスト教では、白い布をかけた小さな机か八足机(はっそくのつくえ)と呼ばれる八脚の小机を用意し、その上に十字架や聖書、花、パン、水、火を灯したロウソクなどを供えます。
花の種類や色は特に決められていませんが、百合などの白い花が無難でしょう。
さらに、キリスト教の葬式で行われる「終油の秘跡」に基づいて聖油を用意する場合もあります。
この儀式は、神父が故人の額や目、口などに聖油を塗り、生前の罪の赦しを神に求めることによって、安らかに眠りにつけるという意味が込められています。
神道の場合
神道では、枕飾りを用意することを「枕直し」と呼びます。神道の枕飾りは、日本におけるキリスト教の儀式に近いものがあります。
神道も八足机を用意し、中心に三方(さんぼう)と呼ばれる前面と左右の三方に穴をあけた台を置きます。三方の上には、お神酒、水、塩、洗米を並べます。これらに故人が好んでいた食べ物を加えることも可能です。
また、神道の場合は、肉や魚などの生臭いものを供えても問題ありません。さらに、三方の手前の両端に榊(さかき)の花をさした花瓶とロウソクを、その他に守り刀として小袋に入れた刃物を置きます。
屏風は、枕飾りの後ろに上下を逆さにして立てるのが通例です。枕直しが終わったら、氏神神社(自宅から最も近い神社)に連絡をしましょう。
飾りの費用について
相場は大体10,000円~30,000円が目安です。近年では葬儀のプランパックに含まれていることもあるでしょう。
遺体を移動する際に葬儀社を決めている場合は、枕飾りも葬儀代金に含まれていることもあるため、事前に確認しておきましょう。
枕経のマナー
枕飾りの準備が終わったら、僧侶に「枕経(まくらきょう)」を上げてもらいます。枕経の際は、黒やグレーなどの落ち着いた色の平服を着用して、遺族のみが立ち会います。
僧侶を呼ぶ際は、座布団、お茶や茶菓子、5,000円~10,000円程度のお車代を用意しましょう。枕経のお布施の金額は特に決まりがあるわけではないので、葬儀が全て終わった後にまとめてお渡しします。
まとめ
枕飾りの基本情報から、宗教ごとの枕飾り、枕経のマナーまでを解説しました。枕飾りの意味を知ると、古くから受け継がれる儀式の大切さが理解できるでしょう。
お別れの時が来て枕飾りを執り行う場合も、落ち着いて行動できるようにしておきたいものですね。