エンバーミングとは?
エンバーミングは、遺体の腐敗を遅らせ感染症の予防するために行う処置のことで、日本では「遺体衛生保全」と呼ばれます。
土葬が使われることの多い海外では、多くの場合、疫病の蔓延を防ぐ目的でエンバーミングを行います。
日本では埋葬前に遺体を火葬するので土葬に比べて感染症などのリスクが少なく、火葬するまでの時間も短いといった理由からエンバーミングは広まりませんでした。
しかし近年は「ゆっくりと故人とのお別れをしたい」「亡くなってから葬儀を行うまでに時間が開いてしまう」といった理由から、日本でもエンバーミングの認知度が上がってきています。
エンバーミングのはじまり
エンバーミングは、古代エジプトで行われていたミイラ作りがその起源だとされています。現在のエンバーミングの原型は、ルネッサンス時代のヨーロッパで開発されました。
当時は、解剖用の献体を保存するために解剖学者が行うものでした。葬送のためにエンバーミングを行い始めたのは、1861年から1865年の南北戦争の間だといわれています。
南北戦争では、戦死した兵士の遺体を遠く離れた故郷へと帰すためにエンバーミングを施しました。
このように遺体の長距離輸送のために行われたエンバーミングが、葬儀を目的とした現在のエンバーミングを広めるきっかけになりました。
どんなことをするの?
エンバーミングでは、下記の4つの処置を行います。これらの処置を施すことで、10日から14日ほど遺体の状態を保つことができます。
1. 遺体を洗浄後、感染症の予防のために消毒をする
2. 時間が経っても腐敗しないように、遺体に防腐処置をする
3. 元気だった頃の故人の姿に近づけるため、遺体を修復する
4. 服を着せて化粧を施す
エンバーミングとエンゼルケアの違い
エンバーミングと混同しやすいものとして「エンゼルケア」があります。
エンゼルケアでは、遺体を清潔にして服を着せ、さらに化粧をすることで、故人が美しく安らかに眠っているように見えるようにします。
エンゼルケアに資格は必要ないので、看護師や葬儀社、納棺師といった人だけではなく、遺族が行うことも可能です。
看護師がエンゼルケアをする場合は、遺体の体内もケアします。エンバーミングが遺体からの感染症の予防と長時間の保存を目的に行われるのに対し、エンゼルケアの場合は、遺体を整えて美しく見えるようにするのが目的です。
日本でエンバーミングができる人
エンバーミングは、専門知識と技術を習得した「エンバーマー」と、医学資格を持った医療従事者のみが行うことができます。
日本には現在、エンバーミングについての法律がないことから、エンバーマーは国家資格ではなく、IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)の認定資格になります。
エンバーマー資格は、IFSA認定のエンバーマー養成校で、2年間のカリキュラムを終了後、ライセンス認定試験に合格することで取得できます。日本のエンバーミングの基準はIFSAが独自に定めているもので、国内で行われるエンバーミングはこの基準に則って施術されます。
トラブルにならないようにするには
エンバーミングは、故人とのお別れの時間を作るために行われます。
大切な故人との時間をゆっくりと過ごせるよう、エンバーミングを検討する際には、次の点に気をつけましょう。
施術中は故人のそばにいられない
エンバーミングは、葬儀社にあるエンバーミング専門の施設でしか施術できません。全国には55ヶ所の専門施設がありますが、施設を持っていない葬儀社も多く、その場合は提携している施設へ遺体を移動させなくてはなりません。
また、エンバーミングには遺族が立ち会うことができないため、施術が終わるまでは故人と離れることになります。
エンバーミングを勧めてくる葬儀社に注意
葬儀社の中には、エンバーミングを勧めてくるところもあります。エンバーミングを行うには少し費用がかかるので、勧められるまま契約をして、後で費用の請求をされた時にトラブルになってしまったという人もいます。
エンバーミングを勧められた時は、それが必要かどうか、費用はどのくらいかかるかを検討し、納得した上で契約することが大切です。
まとめ
いかがでしたか。衛生的な問題を気にすることなく、故人とのお別れを惜しむことができるエンバーミング。
今はまだ一般的ではありませんが、近い将来、日本でも当たり前になるのかもしれませんね。