そもそも弔辞とは
告別式において口頭で読まれる故人を弔うスピーチのことを弔辞と言います。
本来の仏教の葬儀は僧侶の読経が全てで参列者によるスピーチはなく、セレモニーとして発展してきた告別式において、喪主の挨拶とは別に友人の代表者や親族の代表者などが弔辞を述べることが習慣化しました。
弔辞を書く際のポイント
弔辞の長さは3分前後になるように調整します。
400字詰め原稿用紙で3枚程度が適切でしょう。弔辞は同時に3人~5人に頼んでいることが多いため、一人が長くなり過ぎないよう意識します。
避けるべき忌み言葉は死が繰り返されることを連想させるような重ね言葉、「たびたび」「重々」「次々」などです。また「離れる」「切る」「浮かばれない」などの縁起の悪い、不吉な言葉も避けましょう。
内容に含まれるべきは以下の4点です。
1. 悲しみを述べる導入
2. 故人との具体的な思い出・エピソード
3. 遺族への気遣い
4. 別れの言葉
弔辞の文例
「○○さんのご霊前に、謹んでお別れの言葉を捧げます。
この度は誠に突然の訃報に接し、驚きとともに深い悲しみの気持ちでいっぱいです。
昨年春の同窓会の集まりでは変わらず元気なお姿を拝見し、来年もまた集まろうと約束を交わしただけに、このような形で再会することになり悲しみは募るばかりです。
○○さんとの出会いは、××大学の柔道部でした。
同じ新入生の私に気さくに話しかけてくれたあなたの優しい笑顔が今も目に浮かびます。私たちはすぐに意気投合し、親友として日々の練習や勉学を共に過ごしました。
柔道の素質がなかった私とは違い、あなたは天性の才能で試合に勝ち抜き、3年次には部長として活躍、県大会でのわが校優勝を導いてくれました。誰からも信頼される素晴らしい部長として皆を率いてくれました。
卒業後は別々の道を歩んだ私たちでしたが、お互い東京に就職したこともあり、折に触れて食事をしたりお酒を飲んだり、交流が続きましたね。
その後結婚を経て住む場所も遠くなりましたが、まるで空気のような存在になっていたあなたの心はいつも私の側にいてくれたように感じています。
ご遺族の方々も、同じ気持ちだと信じています。悲しくて涙が止まりませんが、いつまでも悲しんでばかりはいられません。くじけそうなとき、いつも励ましてくれたあなたの言葉を胸に、あなたの分まで精一杯これからの人生を生きていきます。
○○さん、かけがえのない思い出をありがとう。
残念ですが、最後のお別れを言う時が訪れてしまいました。さようなら、どうか安らかにお眠りください。」
紙やペンの選び方
本来の日本の礼法から言えば、公的な場で言葉を述べる際は式辞用紙に墨で書き、たとう紙で包んで持参します。
葬儀の場合なら薄墨で、本来の毛筆のマナーから句読点は付けずしたためます。もし会社関連での弔辞を頼まれたなら、社の品格に関わるため必ず毛筆で書きましょう。
それ以外の身近な親族等での弔辞の場合、現代では白い便箋に書いて封筒に入れることも増えています。
ただし、弔辞は基本的には読み終わった後に遺族に渡すものなので、便箋に万年筆で提出するならば式辞用紙にパソコンから印刷した方が、まだ奉書紙の体裁を保っており見た目は良いでしょう。
昨今はプリンター用のA4式辞用紙も売っており、包むたとう紙も同封されています。
急な訃報で遠方に向かうなど、印刷や式辞用紙の調達が間に合わなかった場合は、白い便箋でも構いません。
ただし、その際も二重封筒を使うと「不幸が重なる」と言霊が付いてしまうため、一重の封筒を選びましょう。
便箋が買える書店ならば筆ペンも購入できるので、可能ならば万年筆ではなく毛筆体で自筆しましょう。
葬儀当日の振舞い方
告別式において司会者から呼ばれたら霊前に進み、まず僧侶に一礼、次に遺族に一礼します。その後、遺影に向き直って一礼し、弔辞を取り出します。
左手に置いたたとう紙を右手で開け、中の式辞用紙を取り出したらたとう紙も畳み直して側卓に置きます。側卓がない場合、たとう紙の上に弔辞を重ねて持ちます。
読み終わったら元の様にたとう紙に包み直し、台に置いたまま遺影に一礼、僧侶、遺族に一礼して自席へ戻ります。
弔辞に限らず、大人数の前でのスピーチでは意識して普段よりもゆっくりと発音することが良いスピーチになるポイントです。
広い会場では音の伝わりに時間がかかるため、普段の話し方でも聞いている方は耳が追いつかないものです。
ましてや弔辞では、しみじみとゆっくり読んだ方が参列者も弔いの気持ちに共感しやすくなります。
部屋の上空にいる故人へ声を届ける気持ちで、感情を込めて読みましょう。
まとめ
故人への最後の言葉であると同時に、周囲の人々に恵まれた人生であったと遺族を慰めることにもなる弔辞です。
具体的なエピソードを交え、マナーをわきまえて贈る言葉を捧げたいものです。